見て見ぬふり
「事実は、殺されたのはシエリス・アイヴァーソンで、
殺したのはジャーミー・ストロマイヤー。僕は止められたかもしれ
ない。でも、見ていたところでは、彼女の生命が危機にひんして
いるとは思わなかった」 二十七日に流れたCBS番組「60
ミニッツ」で、デヴィッド・キャッシュはごく普通の表情で
インタビューに答えた。 ラスベガスの少女暴行・殺人事件の
目撃者。友人のストロマイヤーが七歳の黒人の女の子を力ずく
で女子トイレの個室に連れ込むのを見ていながら、その場を
立ち去った少年だ。 必死に抵抗する少女。悲鳴が聞こえない
ように少女の口を押さえる友人。「まさかあんなことになる
とは思わなかった」と言い張るが、そんな光景を前に、いったい
どこのだれが「何も起こらないだろう」と思うだろうか。
番組の中でキャッシュの通う、カリフォルニア大学バーク
レー校の学生は「おまえさんは、へんなことには関わり
たくないって、それしか考えなかったんだろう」と彼に
向かってはきすてるように言った。
それを裏付けるかのような「十八歳の男が
七歳の子供を抱え込んでる、そんな所に居合わせたく
なんかないよ」というキャッシュの言葉。あっけらかん
としたキャッシュ。
だからといって、立ち去ったことを正当化できると思う
幼稚な思考に憤りを覚える。 めんどくさいことに
かかわりたくないから、見てみぬふり――。
だれもが身に覚えのあることかもしれない。適格な
状況判断のできない人間が、そういう態度をとり
今回の悲劇を生んだ。 大学から出ていけという
抗議の声にキャッシュは「エンジニアを勉強する
ならバークレーは一番いい学校だ。絶対にやめ
たりしない」と挑戦的だ。知識より大切ななにか
が自分に欠けていることにこの青年はいつか
気づくのだろうか。(ジュンコ)